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[佐藤ひと美のスイーツレポート⑦]味覚講座 ~おいしさ・味覚の原理と、自分の味覚の感度を知る~

[佐藤ひと美のスイーツレポート⑦]味覚講座 ~おいしさ・味覚の原理と、自分の味覚の感度を知る~

2018/08/30

味覚講座
 

2018年8月4日にスイーツ検定アドバンス試験対策講座として開催された「味覚講座」。
アドバンス試験テキストの「味覚」の章を執筆者である一般社団法人日本味育協会代表・宮川順子先生を講師に迎え、学んできました。

2015年にアドバンス資格を取得する際に一度受講したのですが、3年経ってみて自分の味覚が当時と比べどのくらいの判断ができるようになったのか再確認をしたい!と思い参加してきました。
 

宮川順子先生
 

講師: 宮川順子先生
調理師、フードコーディネーターなどの他各種資格を持ち、「手作り」「スローフード」に取り組む宮川順子先生。「MIIKU日本味育協会」代表・料理教室主宰する傍ら、一般、プロを問わず、協会代表として味覚教育に関する講習や料理技術の講師を精力的に務めています。


食育の重要性について
先生自身が“食育”に対して向き合うキッカケとなったのは、息子さんの体中に赤い発疹が出始めました事だったそうです。加工食品に含まれている添加物のほとんどに反応するという『アトピー性皮膚炎』の改善を目指した際、親子共々「食の重要性」を実感されたそうです。
 

私自身、現在10ヶ月の息子を育てています。毎日離乳食を作るときには旬の食材を使うよう気をつけているのですが、細かいところまで気が配れてないのも事実。
「嫌がるものを無理に食べさせることはダメ」という先生の言葉に、ハッ!としました。
「できるだけ多くの栄養をとって欲しい。」と思い「全部食べなきゃダメだよ」と食べさせていた私。
「無理に食べさせる=嫌い」とインプットされてしまうと聞いて、なんて事をしていたんだろう!と愕然としました。
食に興味を持たせるように「親など一番身近な人が見せる」ことが必要で、食べてみたいと自分から思わせるように仕向けるのが大事なのだそうです。


子供は野菜嫌いが当たり前。
先生は、「野菜は苦い、青臭い、酸っぱいもの。だから子供が嫌いなのも当たり前で、無理に食べさせなくてもよい。でも、できるだけ多くの野菜の種類を食べさせて本能的に苦手な味のキャパシティを広げてあげることも大切」だと教えてくれました。
その時に、「ちょっと口にして嫌ならペッと吐いていいからね。」と言ってあげるのもポイントなのだとか。
そうして野菜に触れることで、味覚に対する理解能力が高くなっていくそうです。
大人になっていく過程の中の経験で【苦味】や【酸味】は慣れていき、ビールのように【苦み】を持つものも「おいしい!」と思うようになっていくのです。


5味とは
毒物など命を落とすかもしれないと感じる【苦味】や、腐っていてお腹を下すかもしれないと感じる【酸味】は赤ちゃんでもわかる本能的に苦手とする味覚です。

幼少期から成長期にかけて身体づくりに必要なエネルギーを本能的に摂取するため“おいしい”と感じる【甘味】や、成長や身体を動かすために必要な栄養素をもつ【塩味】と【旨味】と合わせ、生きていくことにマストな本能的にセッティングされている味については、一般的に「5味」と呼ばれています。


味覚とは
産まれてから3歳ころまでに味覚器官の基礎、例えればパソコンなどのハードウエア―が決まります。そして、10歳までの食育で経験値を上げておくこと、例えればソフトウエアーの数を増やしておくことで味覚のベースが完成される。
この話を聞き、「ということは、私たち大人は味覚能力をアップグレード出来ないの?」と不安になりました。
そこで、味覚を育てるという意味で役立つのは『5味識別テスト』。味の専門家として味覚を磨くうえで大切なのは、自分にとって識別しづらい味覚の弱点を知ることだそう。
 

5味識別テスト

例えば、【甘味】が弱点ならば普段の料理やお菓子作りの過程で甘味の質について分析するなど、アップグレードを行うことで弱点を強みにしてしまうことも出来るのだそう。砂糖、蜂蜜、メープル、ケチャップ、果物という甘味のファクターを幾つもの引き出しに分けるようにし、甘味に対する応用力を持つことも必要です。
 

5味識別テスト
 

そもそも味覚は舌で感じ取るものではなく、舌や頬の内部、軟口蓋(口腔の天井部分)など、口内全体で水溶性(唾液に溶ける)の成分を感じとっているそうです。


美味しさの構成要素は
機械センサーで測れるのが“基本味”といわれる5味+渋味。そこに、香り、コクなどの風味やテクスチャーなどの食味、食事環境などの文化的要素を総合しておいしさが成り立ちます。

80%が見た目(視覚)、15%が嗅覚、残りの5%で味覚(触覚)の判断となります。過去の経験で、同様の食べ物から嫌な体験が想起されると、ファーストインパクトが否定的になってしまうことは仕方がないことなのだそう。そのため、食べることが楽しい!と思える食事やスイーツの時間を取ることが食育にも繋がります。


献立作りのベース
和菓子の場合、旨味成分を持つ「あんこ」がベースになります。あんこの基本は豆、豆はタンパク質があり旨味があります。そこに【甘味】のエネルギー源が足され、果物の【酸味】か、ナッツやゴマなどの【苦味】を加えて味を構成させます。

そして同種同類が基本。
洋菓子の場合、だいたいアーモンドを使います。「何故、クルミやピーナッツなど種類豊富なナッツの中でアーモンドなのか?」と思いますが、アーモンドはバラ科で、ベリー系も全部バラ科。同種同類なのです。

ベースから離れてしまう例えとしては、ウルシ科のマンゴーにベリーなどを加えるのは相性が悪いのでテクニックが必要になります。基本的なベースをしっかり覚えて、相乗効果も学び覚えていくことが必要なのだそうです


最後に
自宅で簡単に味覚トレーニングができるということなのでチャレンジしようと思います。5、6種類のお水を買ってきて毎日少量を全て飲み比べしてみると、1ヶ月も経てば味の変化に気づく事ができるそうです。例えば、アルプスの天然水はナチュラルで、エビアンはトロっとして苦味がある、というように違いがわかるようになります。これは手軽ですし、やってみる価値がありますね!
 

5味を把握することで、何故おいしいのかを分析できる楽しみが増えます。私自身もより深く味覚を学ぶことで、ライターの仕事でもより深みのある記事が書けるようになるのではないかと思った、素晴らしい「味覚講座」でした。